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自然界の細菌2種でがん細胞を破壊 自然界にいる2種類の細菌を使ってがん細胞を攻撃し小さくすることに、マウスを使った動物実験で成功したと、北陸先端科学技術大学院大や筑波大などの研究チームが英科学誌に発表した。従来とは異なるアプローチで、治療方法の確立につながる可能性があるという。チームは、自然界の細菌が動物の細胞を攻撃する力を活用した。抗がん剤治療や外科的な切除など従来とは異なる方法で、がん治療の選択肢を増やすことを目的としている。細菌は、田んぼなどにもいる「ロドシュードモナス・パルストリス」と、マウスのがん細胞で見つかった「プロテウス・ミラビリス」という2種類。いずれも、がんが体内で生み出す酸素が少ない環境に集まりやすい。チームはヒト由来の大腸がん、卵巣がん、膵臓がんを植え付けたマウス計25匹に対して、2種類の細菌を一緒に注射して、効果を調べた。その結果、ロドシュードモナス菌が血液を通じて、がん細胞まで菌を運ぶ役割を担い、がんに到達したプロテウス菌が爆発的に増加した。プロテウス菌は、がん細胞や周辺の血管を解かすたんぱく質を大量に放出し、細胞への栄養供給を途絶。さらに、菌の体がやりのように伸び、細胞を貫くように破壊することがわかった。(2025年8月7日朝日新聞) 病院の9割赤字 自治体が運営する公立病院の2024年度決算で、約9割の病院が赤字になる見込みであることが全国自治体病院協議会の調査でわかった。公立病院は不採算部門を多く抱えており、もともと赤字の割合は6割ほどだったが、約9割にのぼる赤字割合は過去最悪の水準だという。調査は841病院を対象に6~7月に実施。657病院から有効回答を得た。その結果、86%にあたる562病院が経常赤字だった。黒字は14%の95病院にとどまった。赤字の主な要因は、本業である医業の費用の高騰だ。特に医療費用の約半分を占める職員給与費や、約4分の1を占める薬代などの材料費。病院の役割別にみると、感染症指定医療機関や災害拠点病院で94%、救命救急センターで93%、へき地の拠点病院で90%が赤字など、軒並み高かった。(2025年8月6日朝日新聞) iPS細胞つかったパーキンソン病治療 iPS細胞からつくった神経細胞をパーキンソン病の患者に移植する治療について、住友ファーマは再生医療製品としての製造販売承認を申請したと発表した。審査結果は年度内にも示される可能性があり、承認されれば、iPS細胞を使った世界初の治療法となる。パーキンソン病の患者は国内で推定約25万人。ドパミンという物質をつくる脳内の神経細胞が減り、手足が震えたり、体が動きにくくなったりする。脳にドパミンを補充する薬物療法で症状を抑えるが、数年経つと薬が効きにくくなる。iPS細胞を使ったこの治療法は、他人のiPS細胞をドパミンをつくる神経のもととなる細胞に変化させ、患者の脳に移植し、症状の改善をねらう。治療の安全性や効果について、京都大の研究チームが2018年から医師主導で治験を進めていた。治験結果によると、薬の効きが悪くなってきた50~60代の患者7人の患者の脳に計500万~1千万個の細胞を移植したところ、健康上の大きな悪影響は無かった。また、移植した細胞が定着し、ドパミンをつくり出すことを確認した。飲んでいる薬が効いていないときの運動機能を評価すると、6人中4人の症状が改善した。例えば、車いすが必要な患者が、介助を受けながら立ち上がったり歩いたりできるようになった。(2025年8月5日朝日新聞) 月1千万円超の医療費の件数、10年で7倍増 高い効果をもつ画期的な薬が、次々に登場している。患者家族にとっては治療の可能性を広げる「希望の光」だが、新たな技術を使っていることもあって高額化が進む。患者1人あたり1カ月の医療費が1千万円以上となる件数は、10年間で7倍に増えた。「高額療養費」の負担引き上げが議論されるなど、医療財政の圧迫という新たな課題に直面している。日本で長年、死因の1位となっているがんの治療では、薬の進歩が著しい。2000年前後にがん細胞を「狙い撃ち」する「分子標的薬」が登場。このころから、薬の高額化が始まった。大きな話題になったのは、2014年に発売された、免疫チェックポイント阻害剤「オプジーボ」。1人あたり年間約3500万円という価格が注目された。19年には、1回の投薬で済むが、1人あたり3千万円以上という遺伝子治療薬「キムリア」も発売になった。がん以外の薬も高額化が進む。2020年には2歳未満の子どもの脊髄性筋萎縮症に対する「ゾルゲンスマ」(1人約1億7千万円)、2023年には目の病気「遺伝性網膜ジストロフィー」に対する「ルクスターナ」(両目で1人約1億円)が発売された。いずれも遺伝子を使った「遺伝子治療薬」で、1回の投薬で効果が期待できる。健康保険組合連合会が、全国の健保組合の診療報酬明細書(レセプト)を分析した結果によると、患者1人あたりの1カ月の医療費が1千万円以上の件数は、2023年度に2156件で過去最多を更新。10年間で7倍に増えている。1千万円以上のレセプトは計344億円で、9年前の14年度と比べて約300億円増えた。こうした費用を押し上げるのは、価格が著しく高い薬だけではない。ある程度高額で1回あたりの投与量が多く、継続的な使用が必要になる薬の存在も大きい。2023年度のレセプトの総額が最も高かった薬は、血友病治療薬「ヘムライブラ」。1974件使われ、合計額は113億円を超えた。近年登場する薬が高いのは、「バイオ医薬品」と呼ばれる新たな技術を使ったタイプのためだ。遺伝子組み換えや細胞培養などの技術を使ってつくられた、たんぱく質を主成分としている。従来の薬に比べ、製造や品質管理のために大規模な設備が必要とされ、コストにも影響している。一方、高齢化で医療費の増加が課題となるなか、政府は近年、薬価を抑えることで、医療費全体の伸びを抑えてきた。対象とする患者の範囲が広がった薬は、段階的に薬価を下げるなどしている。(2025年8月4日朝日新聞) アトピー性皮膚炎、バイオ製剤が続々 アトピー性皮膚炎の治療は、生物学的製剤の登場で、大きく様変わりしている。従来使われているステロイドは、炎症に関わるたんぱく質の働きを幅広く抑える。これに対し、生物学的製剤は炎症を起こす特定のたんぱく質に直接作用する。2018年に保険適用された「デュピクセント」は、炎症に関わる「IL-4」と「IL-13」の働きを抑える。2022年にはIL-13を標的にする「アドトラーザ」が、国内での製造販売を承認された。2024年には、同じくIL-13の働きを妨げる「イブグリース」が承認。また、かゆみに関わる「IL-31」を標的とする「ミチーガ」も、2022年に承認されている。対象年齢はそれぞれだが、生後6カ月から使えるものもある。いずれも注射薬で、既存の治療で十分な効果が得られない人が対象だ。生物学的製剤の場合、細胞を培養して抗体となるたんぱく質を作り、そこから特定の分子をきれいなかたちで取り出してつくる。複雑な工程があり、厳格な温度管理も必要になる。アドトラーザを開発したレオファーマによると、臨床試験を始めてから、国内での製造販売承認を申請するまでに十数年を要した。薬価は、300ミリグラムのペン型が約4万2千円、150ミリグラムのシリンジ型が約2万4千円。先行して保険適用されたデュピクセントの価格に準じて決められた。(2025年8月3朝日新聞) がん免疫チェックポイント阻害剤 これまでのがん治療は、がん細胞やがんの組織そのものを直接攻撃するものだった。一方で免疫チェックポイント阻害剤は、がん細胞を直接攻撃しない。免疫細胞のうち、がん細胞を攻撃する性質がある「T細胞」に作用して、免疫にブレーキがかかるのを防ぐことで、がん細胞を攻撃させる。国内では2014年秋にオプジーボが登場して以降、「キイトルーダ」「テセントリク」「ヤーボイ」などの免疫チェックポイント阻害剤が保険適用されている。適応となる対象のがん種も増え続けている。ただし、免疫チェックポイント阻害剤は、抗がん剤や分子標的薬と同様に、すべての患者に有効な治療ではない。また、効果が出る人と出にくい人がいるとされる。ほかの治療と組み合わせたり、効果が出る場合の特徴を調べたりする研究も進んでいる。免疫のブレーキを外すため、間質性肺炎や甲状腺機能低下症など免疫に関連した副作用を起こすことがあり、注意が必要だ。新薬で開発や製造にコストがかかる分、一般的な抗がん剤に比べて高額だ。長期間使うことになる場合もあり、患者の費用負担も大きくなりやすい。オプジーボは、日本で発売された当初、患者が少ない皮膚がんの一種(メラノーマ)の治療薬として売り出された。投じた研究費なども考慮して採算が取れるよう、国が決めた薬価は100ミリグラム約73万円だった。翌15年に患者が多い肺がんに使えるようになると、販売額が急増。保険財政に大きな影響を与えるとして、薬価は半額まで下がった。現在までに段階的に6回引き下げられている。現在は、100ミリグラムで約13万円となり、薬価は当初の2割弱まで下がった。治療の対象も広がり、胃がんや食道がん、非小細胞肺がんなど14のがん種で承認されている。(2025年8月2日朝日新聞) がんウイルス療法の新薬 ウイルスを使ってがん細胞を破壊するウイルス療法。従来の薬を改良した新薬が皮膚がんの一種、悪性黒色腫(メラノーマ)の患者に対して高い有効性を示すことが確認できたと、東京大と信州大の研究チームが発表した。ウイルス療法は、遺伝子を改変し、がん細胞だけで増えるように設計したウイルスをがんに感染させ、破壊する治療法だ。ウイルスは一定程度まで増えると免疫によって排除されるが、その際に免疫ががん細胞を認識し、体内の別の部位にあるがんに対しても免疫を発揮する効果が期待できる。これまでに、「単純ヘルペスウイルスⅠ型」に遺伝子改変を施したウイルス「G47Δ(デルタ)」を開発。ウイルス療法薬「テセルパツレブ(商品名デリタクト注)」として、2021年に脳腫瘍(しゅよう)の一つである悪性神経膠腫に対して条件付きで承認、販売されている。今回は、G47Δに、免疫反応を刺激するIL-12遺伝子を組み込み、がんへの免疫効果を改良した「T-hIL12」を開発。難治性の希少がんである悪性黒色腫で、手術ができない、または転移した患者への治療効果を治験で調べている。9人を対象にした中間解析では、標準治療で使われる免疫チェックポイント阻害剤に加え、T-hIL12を併用して治療したところ、治療が効いた割合は77.8%だった。免疫チェックポイント阻害剤のみによる治療では34.8%とされている。新しい薬を併用することで、治療の効果を高めていることが確認できたという。(2025年8月2日朝日新聞) 地方の国立5大学が医学研究で連携 山口大学、秋田大学、香川大学、旭川医科大学、鳥取大学の国立5大学は、医療研究ネットワーク「Alliance5」を結成した。各大学の医学研究を効率的に進めるため、患者の臨床データや解析技術を共有し、超高齢社会に伴う加齢研究や希少疾患の研究を進めていく。高齢化社会の日本の中でも、地方は超高齢化を迎えている。この医療研究ネットワークは、超高齢社会に最適な医療を提供するための研究を進めていく。主に、がん、免疫疾患、血管病変、神経・精神疾患の四つの分野を対象に、各大学が研究に取り組んでいく。高齢者は複数の病気を抱えていることが多い。大学病院や高度医療を提供している病院がいくつもある都市部では、1人の患者が病気ごとに別の病院に通院しているのが実態だ。一方、地方では一つの大学病院だけで1人の患者のあらゆる病気に対応していることも多い。ネットワークでは、こうした地方大学ならではの強みを生かしていく。今回の5大学は北海道、東北、中四国と地域もばらつきがあるため、多彩な気候条件や生活習慣の違いによる病気の特徴を研究することもできる。まずは、3年かけて患者データと検体を集め、山口大が得意とする人工知能(AI)を使った解析を進めていく。その後、新しい薬や検査法の開発に挑戦する。今回は元々共同研究の実績がある5大学から始めるが、今後は参加する大学を増やしていくという。日本は、研究力の低下も課題となっている。大学病院も物価や人件費の高騰で赤字となり、研究よりも「診療」が中心となりつつある。山口大の谷沢幸生学長は「大学には医療機器もあり、仲間もいて、新しいことに挑戦できる環境がある。各大学が連携することで、それぞれの研究の強みを何倍にも大きくして世の中に還元していきたい」と話した。(2025年8月1日朝日新聞) 梅毒感染、過去最多ペース 東京都の梅毒感染報告数が7月中旬時点で1955件となり、過去最多だった昨年を上回るペースで推移していることが都の集計で分かった。4年連続で過去最多を更新しており、今年も昨年を上回るハイペースとなっている。年代別で男性は20~50代が多く、女性は20代が多い。10代の感染や妊娠合併事例も増えている。近年の感染者増加の原因の一つとしてSNSやマッチングアプリなどを通して個人同士が直接つながり、不特定多数の人と交流を持つといった傾向が助長しているのではないかと分析する。梅毒は梅毒トレポネーマという病原体により引き起こされる感染症。主に粘膜や皮膚の接触を伴う性行為で感染する。潜伏期間は約3週間。性器や口の中に小豆から指先くらいの大きさのしこりや痛みの少ないただれができ、痛みやかゆみのない発疹が手のひら、足の裏、体中に広がるなどの症状が現れる。症状が消えても感染力は残るのが特徴。治療をしないまま放置していると、数年から数十年の間に心臓や血管、脳などの複数の臓器に病変が生じ、死にいたることもあるという。キスでも感染する可能性があるという。また、一度治っても再び感染することがある。妊娠中の梅毒感染が特に危険で、妊婦が感染すると胎児に感染する可能性がある。妊娠している人が梅毒に感染すると、母親だけでなく胎盤を通じて胎児にも感染し、死産や早産になったり、生まれてくる子供が神経や骨などに異常をきたすこともあるという。(2025年7月31日産経新聞) 老化細胞、糖尿病の治療薬で除去 加齢に伴って蓄積する「老化細胞」を糖尿病の治療薬で除去することを狙った国内初の臨床研究を順天堂大学らのグループが始める。グループは治療薬を患者に投与し、老化細胞が引き金となる病気や機能低下の進行を抑える効果があるか調べる。老化細胞は細胞分裂を終えた後も死なずに蓄積した細胞で周囲に炎症を引き起こし様々な病気の原因になる。マウスの実験で尿への糖の排出を促す糖尿病治療薬「SGLT2阻害薬」が老化細胞を除去して、糖尿病や動脈硬化、虚弱(フレイル)を改善する効果があることを明らかにした。早老症のマウスでは寿命を延ばす効果も確認され、論文が昨年、科学誌「ネイチャー・エイジング」に掲載された。今回の臨床研究では、65歳以上の心不全、糖尿病、慢性腎臓病の患者50人を対象に、SGLT2阻害薬を1年間投与する群と投与しない群に分けて効果を比較する。人ではマウスと違って老化細胞を直接調べることが難しい。このため患者のDNAの変化から「生物学的年齢」を推定し、体の機能や老化の進み具合を調べる。認知機能やフレイルの変化も確認する。アンチエイジング(老化防止)を目指した研究は世界で加速している。老化細胞の除去はこれまで主に抗がん剤などを使って研究されており、副作用が課題になっていた。(2025年7月30日読売新聞) iPS細胞、拡張型心筋症の患者に移植 iPS細胞からつくった心臓組織のシートを、重い心不全の患者に移植したと東京女子医大が発表した。患者は予定通り移植後1カ月で退院した。このシートを移植する治験は、今後、東京大病院や九州大病院でも実施され、計10人の患者で効果と安全性を確認する予定だ。心臓組織シートは京大発ベンチャーが開発した。今回の移植が1例目となる。iPS細胞から心臓の筋肉の細胞や血管の細胞を作り、シートを作製。シートの間にゼラチンをはさみ、5層に加工した多層シートを患者の心臓に移植する。シートから分泌される物質によって心臓機能の回復を図る。今回の治験は、心臓のポンプ機能が落ちて心臓が大きくなる「拡張型心筋症」の18~79歳の患者が対象。この病気の患者は国内に約2万人いるとされ、子どもから高齢者まで幅広い年齢層で発症する。薬を使って心不全を予防するが、症状が進行すると、補助人工心臓や心臓移植が必要となる。(2025年7月28日朝日新聞) 高血圧治療の目標値、75歳以上 日本高血圧学会は、高血圧の治療で血圧を下げる際の目標値について、75歳以上で上の血圧(収縮期)と下の血圧(拡張期)をこれまでより10引き下げ、上130、下80未満に抑える新たな治療指針を発表した。75歳以上の場合、血圧の下げ過ぎによる転倒リスクなどから、目標値が高めに設定されていたが、血圧を下げることで、脳卒中などの予防効果が高いと判断した。同学会によると、国内には、約4300万人の高血圧患者がいるとされ、脳卒中や心筋梗塞など脳や心臓の血管に生じる病気の原因となる。年間17万人の方が高血圧が要因で死亡したと推計されるが、高血圧患者の4割強が未治療となっている。前回の指針では75歳未満の治療目標を上130、下80未満としていたが、今回指針では75歳以上も一本化した。なお、高血圧症の診断基準は、上140以上または下90以上です。(2025年7月25日読売新聞) 日本人の平均寿命 2024年の日本人の平均寿命は女性が87・13歳、男性が81・09歳となり、前年比で横ばいだったことが厚生労働省公表の簡易生命表で分かった。国別では女性が前年と同じく世界1位で、男性は5位から6位に下がった。女性は2位韓国(86・4歳)、3位スペイン(86・34歳)。男性は1位スウェーデン(82・29歳)、2位スイス(82・2歳)、3位ノルウェー(81・59歳)です。(2025年7月25日産経新聞) 男性にもHPVワクチン 厚生労働省の専門部会は、子宮頸がんを予防するための9価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの効能効果に肛門がんの予防などを追加し、接種対象を男性にも広げることを了承した。近く正式承認される見通し。対象は9歳以上で、接種回数は15歳未満で2回、15歳以上で3回。予防接種法上の「定期接種」になれば費用は公費負担になるが、男性は対象ではないため自費での任意接種になる。ただ承認されれば、接種後に健康被害が出た場合は救済の対象となる。HPVは、男性でも肛門がんや性器にいぼができる尖圭コンジローマの原因となる。9価ワクチンは200種類以上あるHPVの遺伝子型のうち、高リスクの9種類に対応する。4種類の遺伝子型の感染を防ぐ4価ワクチンでは既に肛門がんなどへの予防効果が認められ、男性向けにも承認されていた。(2025年7月24日産経新聞) iPS細胞からつくった精子・卵子の受精を容認 内閣府の生命倫理専門調査会は、ヒトのiPS細胞など幹細胞からつくった卵子や精子から受精卵をつくる基礎研究を認める報告書を大筋でとりまとめた。国の指針で禁じられていたが、研究目的に限り容認する。文部科学省などが今後、関連する指針の改正に向けた検討を進める。受精卵からつくるES細胞(胚性幹細胞)や、血液などの細胞からつくるiPS細胞(人工多能性幹細胞)は、無限に増え、様々な細胞に変化できる能力を持っており、世界ではこれらの幹細胞から精子や卵子をつくる研究が進められている。日本では2010年の国の指針が、ヒトの幹細胞から精子や卵子をつくる研究は認めているが、受精は認めていない。調査会がまとめた報告書は、幹細胞でつくった卵子や精子を受精させる研究について、受精直後に胚で起きていることの解明に有用で、遺伝性疾患や不妊治療の開発などにつながる期待があるとして容認。ただ、胚を子宮に移せば、「『人』として誕生し得る存在」となることから、培養期間は14日まで、子宮への移植は禁止した。目的も生殖補助医療や、遺伝性疾患の解明など一部の基礎研究に限る。(2025年7月24日朝日新聞) 健康維持には「1日7000歩」 健康を維持するのに最適な1日当たりの歩数は「7000歩」かもしれない。こんな結果をオーストラリアなどの研究者がまとめ、英医学誌ランセット姉妹誌で発表した。関連する研究を統合的に評価し、16万人分のデータを解析。2000歩の人に比べると死亡率が半減することが明らかになった。研究チームは、歩数と死亡率、病気の発症などを解析した57件の論文を抽出し、評価した。これらの研究には米国や英国、日本などの成人16万1176人が参加している。1日の歩数が7000歩の人は、2000歩の人に比べ、全ての死因による死亡率が47%低かった。病気別にも心血管疾患の死亡リスクは47%低く、がんに伴う死亡リスクも37%低かった。病気の発症との関連でも、認知症38%、心血管疾患25%、うつ症状22%、2型糖尿病14%、がん6%とそれぞれリスクが下がっていたことが判明した。チームは「長らく『1万歩』が非公式な目標とされてきたが、活動的でない人にとっては7000歩が現実的だ。それでも健康状態を大幅に改善できる歩数である可能性が高い」と評価した。(2025年7月24日毎日新聞) 抗菌薬が効かない、サイレントパンデミック警戒 抗菌薬が効かない「薬剤耐性菌」への警戒が高まっている。全世界の死者は2050年までに年1千万人に達するとも予測され、対策は待ったなしの状況だ。「サイレントパンデミック」(静かな世界的大流行)を引き起こすともいわれるその脅威に、どう向き合えばいいのか。国立健康危機管理研究機構の報告では、マクロライド系抗菌薬に耐性を持つ百日咳でも近年、中国を中心とする諸外国で拡大。日本でも昨年以降、耐性菌の検出が相次ぐ。こうした薬剤耐性菌は各国で確認されており、薬剤耐性を持つ大腸菌や黄色ブドウ球菌なども存在する。いくつもの抗菌薬に耐性を持つ「多剤耐性菌」も出現している。世界保健機関(WHO)の発表では、2019年時点で薬剤耐性菌による死者は年100万人超と推計される。日本政府は、「薬剤耐性の発生をできる限り抑える」として、抗菌薬の使用量を27年までに、20年比で15%減らす目標を掲げる。薬剤耐性菌は、体の中の常在菌が突然変異して生まれることがある。元の菌よりも増殖が遅いため、通常は自然に淘汰されてしまうことが多いが、耐性菌が常在菌と置き換わってしまうこともある。その要因となり得るのが、「抗菌薬の不適切使用」だ。例えば、風邪などのウイルスによる感染症に抗菌薬は効かないが、患者からの求めで不必要な抗菌薬を処方したとする。それを患者が服用すると、常在菌が減ってしまい、耐性菌が選択されて増殖する恐れがある。また、飲み切るように言われた抗菌薬の服用を途中で止めてしまった場合、生き残った病原菌が耐性菌に変異し、増殖することもあるという。耐性菌を保持していても、健康な人なら免疫の働きですぐに症状が出ることは少ない。だが、抵抗力の弱い高齢者や乳幼児、基礎疾患を持つ人らに耐性菌が伝播すると、治療に難渋し、重症化や死亡のリスクが高まる。残念ながら新しい抗菌薬の開発数は極めて少ない状況。耐性菌の出現を防ぎ、既存の抗菌薬の有効性を維持することが大切だ。(2025年7月17日産経新聞) がん免疫療法、効果を高める腸内細菌を特定 がん免疫療法の薬の効き方に関与している腸内細菌を新たに特定したと、国立がん研究センターなどの研究チームが発表した。この腸内細菌ががん周辺の免疫環境に影響するメカニズムも明らかになり、今後、治療に応用するための研究が進むことが期待される。論文は15日、英科学誌ネイチャーに掲載された。オプジーボなどに代表される免疫チェックポイント阻害薬は、がんが免疫から逃れる仕組みを遮断し、「キラーT細胞」と呼ばれる免疫細胞の働きを強めて、がんを攻撃させる効果がある。ただ、長期的に効果が続く患者は20%ほどとされる。これまでの研究から、人間の腸内に100兆個以上いるという腸内細菌の関与が報告されてきたが、どの菌が影響するのかはわかっていなかった。チームは、肺がんと胃がんの患者71人について、免疫チェックポイント阻害薬が効く人と効かない人の便の腸内細菌を調べた。すると、薬が効いた患者では、ルミノコッカス科という種類の細菌が多いことがわかった。さらに、薬の効果を高めている細菌株を新たに特定。「YB328」と名付け、培養することに成功した。あらかじめ腸内細菌を除去したマウスを使った実験では、免疫チェックポイント阻害薬とYB328を併用した場合に、がんが小さくなる効果が見られた。また、薬の治療が効かなかった患者の便を移植したマウスでも、YB328を投与すると、治療効果が表れた。さらにチームは、YB328がどうやって腸から離れた場所にあるがん周辺の免疫に関与するのか、メカニズムを探った。その結果、YB328の作用によって、免疫応答の司令塔である樹状細胞が腸内で活性化し、離れた臓器のがんやリンパ組織に移動。そこでキラーT細胞を活性化させ、免疫効果が発揮されることがわかった。YB328は、人種や地域にかかわらず、世界中で約2割の人が保菌している安全な菌だと考えられるという。YB328を投与することで、免疫チェックポイント阻害薬が効かなかった人に対しても治療効果を上げられる可能性がある。(2025年7月15日朝日新聞) 「日本版敗血症診療ガイドライン2024」改訂 日本版敗血症診療ガイドライン2024が公開された。敗血症の定義は感染症に対する生体反応が調節不能な状態となり、重篤な臓器障害が引き起こされる状態。敗血症ショックは適切な初期輸液療法にもかかわらず平均動脈圧65mmHg以上を維持するために血管収縮薬を必要とし、かつ血清乳酸値が2mmol/L(18mg/dL)を超える状態とされている。敗血症性ショックは致死率30%を超える重篤な病態である。ICU以外の一般病棟や救急外来においては、quick SOFA(qSOFA:意識変容、呼吸数≧22/min、収縮期血圧≦100mmHg)を用いたスクリーニングツールが提唱されている。敗血症が疑われる場合、主要な構成要素は以下のとおりで数時間以内に完了させることが目標とされている。微生物検査(血液培養を2セット、感染巣からの検体採取)抗菌薬(適切な抗菌薬投与)。初期蘇生(初期輸、低血圧を伴う場合は初期輸液と並行して早期にノルアドレナリン投与、乳酸値と心エコーを繰り返し測定)。感染巣対策(感染巣の探索と同定後のコントロール)。ショックに対する追加投与薬剤(バソプレシン、ヒドロコルチゾン)。本ガイドラインでは、「敗血症または敗血症性ショックと認知した後、抗菌薬は可及的早期に開始するが、必ずしも1時間以内という目標は用いないことを弱く推奨する。メタ解析からは、1~3時間程度のタイミングでの投与が良好な予後と関連する可能性も示唆された。抗菌薬の選択は「疑わしい感染巣ごとに、患者背景、疫学や迅速微生物診断法に基づいて原因微生物を推定し、臓器移行性と耐性菌の可能性も考慮して選択する方法とされている。広域抗菌薬を漫然と使用するのではなく、標的への適切な抗菌薬選択を行うことで死亡率が低下すると適切な抗菌薬投与の重要性を強調。敗血症の原因感染臓器は、多い順に、呼吸器31%、腹腔内26%、尿路18%、骨軟部組織13%、心血管3%、その他8%となっている。抗菌薬を選択するうえで、グラム染色検査を利用することを弱く推奨する。グラム染色により不要な抗MRSA薬や抗緑膿菌薬の使用を削減できる可能性が示された。腎機能低下時、初期の安易な抗菌薬減量を避ける。敗血症の急性期の投与開始初日においては、腎機能(eGFRなど)の数値のみに基づいて安易に抗菌薬を減量すべきではない、という考え方も示された。比較的短期間(7日間以内)の抗菌薬治療を行うことを弱く推奨する。敗血症においても多くの場合1週間以内の治療で生命予後は同等であり、耐性菌出現リスクを低減できることが示されている。抗菌薬中止の判断材料としてプロカルシトニンを指標とした抗菌薬治療の中止を行うことを弱く推奨する。(2025年7月11日ケアネット) 色落ちノリ、肝がん予防などに効果か 海藻のノリに含まれる成分が、肥満や糖尿病、脂肪肝炎、肝がんを予防する可能性のあることがマウスの実験で分かったと、慶応大などのチームが米科学誌「iScience」に発表した。この成分は黒く色づかずに廃棄される「色落ちノリ」に多く含まれると。成分は「ポルフィラン」。チームは、発がん物質を投与し、肝がんを起こしやすくしたマウスに、高脂肪の食事とともにポルフィランを与えた。与えないマウスでは肝臓の平均約15カ所にがんができたが、与えたマウスは平均約1カ所だった。ポルフィランを与えたマウスでは、腸内細菌の構成が大きく変化していた。悪玉の腸内細菌によって産生される、毒性の高い胆汁酸も減少していたという。(2025年7月9日産経新聞) レカネマブ、費用対効果が低いと評価 アルツハイマー病の新しい治療薬「レカネマブ(商品名レケンビ)」について、現在の価格では費用対効果が低いとの分析結果が中央社会保険医療協議会で示された。現在の薬価は患者1人あたり年間約300万円だが、今後、中医協での議論を経て15%引き下げられる見通しだ。アルツハイマー病では、脳内にアミロイドβ(Aβ)などのたんぱく質が蓄積し、神経細胞を壊すと考えられている。レカネマブはAβを除いて認知症の進行をゆるやかにする薬として、2023年に日本で初めて承認された。日本の薬価制度では、市場規模が大きいか単価が高い医薬品は、国立の研究施設などで費用対効果が分析され、薬価が調整される。レカネマブも対象になっていた。(2025年7月9日朝日新聞) 傷に塗る遺伝子治療薬承認 軽い刺激で皮膚に水ぶくれができたり傷になったりする難病「表皮水疱症」の遺伝子治療薬について、厚生労働省の専門家部会は製造販売承認を了承した。繰り返し使うことが想定され、販売が先行する米国では単価が高いため、患者あたりの薬剤費は高額になることも予想される。治療薬は「バイジュベック・ゲル」。病気の原因になっている遺伝子のはたらきを補う遺伝子治療薬のなかでも、世界で初めて患部に塗るタイプとなっている。米国では2023年に承認された。1製品あたり約350万円。使用量は患者の患部の大きさで異なるが、1人の患者あたり約9000万円ともされる。日本での販売価格は今後、別の審議会であらためて検討される。対象疾患は、皮膚がはがれやすくなる難病「表皮水疱症」のうち、「栄養障害型」とよばれるタイプ。国内に約250~500人ほどの患者がいるとされる。(2025年7月8日朝日新聞) 今年度の病床削減、1万1000床に拡大 厚生労働省は、病床を減らす医療機関に補助する今年度の事業について、対象を拡大することを決めた。春の第1次分約7200床から約4100床を上乗せする計画で、合わせて1万1000床超が削減されることになる。厚労省は1病床を減らすごとに約410万円を医療機関に補助する。2023年度から2年連続赤字の病院などが対象で、第1次で除外していた公立病院も加える。1医療機関あたりの削減は10床を上限とする。都道府県別では、合計で北海道が750床と最多になり、東京715床、神奈川545床、千葉447床、鹿児島392床などが続いた。物価高などを背景に病院の経営環境は悪化しており、24年6~11月に全国の6割の病院が赤字だったとの民間の調査結果もある。過剰な病床は経営上の重荷になっている。(2025年7月7日読売新聞) 国内作製のiPS細胞、海外で初めて治療に使用 iPS細胞によってパーキンソン病を治療する臨床試験が米カリフォルニア州の大学病院で行われた。国内でiPS細胞から作られた細胞が、海外で治療に使われるのは初めてという。パーキンソン病は、運動に関わる脳の神経細胞が減り、運動の指令を伝える物質「ドーパミン」が不足して手が震えたり、歩くのが困難になったりする難病。京都大は、人のiPS細胞を神経細胞に変化させ、患者の脳へ移植してドーパミンを補う治療法を開発した。米国での1例目の患者への移植は、6月25日に実施された。性別や症状などは非公表としており、今後約2年間、経過観察を続けるという。計画では、今回の臨床試験は計7例実施する予定。国内ではすでに京大チームが同様の試験を実施し、患者6人のうち4人で症状が改善したとの論文を4月に発表。米国では患者が日本の3倍以上の約100万人いるとされており、実用化が期待される。(2025年7月7日読売新聞) 多機能のiPS肝細胞開発 世界初、肝硬変治療応用も 人の肝臓が持つ多層的な機能を、iPS細胞で世界で初めて再現したとの研究成果を、大阪大の研究チームが英科学誌ネイチャーに発表した。開発した肝細胞は人工透析のように体外で肝機能を補助する医療機器「バイオ人工肝臓」に活用できると期待され、チームは2~3年後の臨床応用を目指したいとしている。肝細胞は一つの細胞の中に三つのゾーンがあり、場所によって役割が違う。あるゾーンでは主に糖を作って脂肪を分解する一方、反対のゾーンは逆に糖が分解されて脂肪が蓄えられるという複雑な仕組みになっている。肝硬変など重度の肝不全になるとこうしたゾーンごとの機能が低下する。チームは、それぞれのゾーンが、特定物質の濃度に反応して作られることに着目。ビタミンCの一種と、ビリルビンという色素の濃度を人工的に変える方法を開発し再現した。ビタミンCを作り出す遺伝子を組み込んだiPS細胞と、通常のiPS細胞を用意。通常の細胞にはビリルビンを投与した。肝細胞に分化させたところ、それぞれのゾーンへと変化した。さらに培養すると細胞同士が融合し、肝臓の機能を再現できたという。再現した肝細胞を重度の肝不全のラットに移植すると生存率が向上。肝硬変などの治療に応用できるという。(2025年7月4日共同通信社) ES細胞から卵子のもとになる細胞作りに成功 様々な細胞になれる能力を持つES細胞(胚性幹細胞)から卵子になる直前の状態の細胞をつくることに、京都大学の研究チームがマウスで成功した。卵子がどのような過程でつくられていくのかの解明につながるという。ヒトでも作れるように目指し、不妊の原因の解明につなげたいとしている。これまで卵子のもとになる「卵母細胞」をつくるには、卵巣にある体細胞を一緒に培養することが必要だった。研究チームはこれまで、体細胞なしに精子や卵子になる大元の細胞から卵母細胞の初期段階までつくるのには成功していたが、今回、生理活性物質を与えるタイミングなどを工夫し、発生率が数%だったものをほぼ確実につくる方法を開発した。さらに、卵母細胞を卵子に成熟させるために必要な体細胞から分泌される物質の特定をすすめた。その結果、細胞間や細胞内で情報を伝えるたんぱく質や、ビタミンEなどの抗酸化物質を加えることで、卵子になる直前の状態まで再現することにも成功した。(2025年7月1日朝日新聞) |
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